水上恒司の演技力に対する評価は、単に「ルックスが良い」という次元にとどまりません。現場スタッフや共演者、さらには映画ファンの間で一致しているのは、役柄の生活感や背景を徹底的に吸い込んで表出させる「土の匂い」がするような生々しいリアリティです。
高校時代は強豪・創成館高校(長崎)の野球部で副主将兼キャッチャーを務めていた経験は、彼の表現力に色濃く反映されています。監督や演出家の意図を瞬時に汲み取る観察眼、厳しい稽古や過酷な撮影現場にも耐え抜く強靭なフィジカル、そして相手の演技を受ける受容力は、捕手として投手の球を受け止め、グラウンド全体を指揮してきた経験から培われたものです。
映画関係者の証言によると、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の撮影時、水上は1945年の特攻隊員に関する手記や歴史資料を読み込み、現代的な言葉のイントネーションを削ぎ落として本番に臨んでいました。悲壮感を誇張するのではなく、「当たり前の日常を愛し、大切な人を守りたい」と願う青年の素朴さを演じ切ったことで、若い世代からシニア層まで幅広い観客の涙を誘う結果となりました。