SNSや知恵袋、韓国留学コミュニティを調査すると、「ドラマの真似をしてナドと言ったら、現地の年長者に注意された」「バイト先で韓国人店長にナドと言ってしまい気まずくなった」という失敗談が数多く投稿されています。なぜ日本人はこの「距離感のバグ」に陥りやすいのでしょうか。
ソウル在住の日本人留学生(20代女性)は自らの苦い経験を次のように振り返ります。「推しのアイドルがバラエティ番組で『ナド!ナド!』と可愛く連呼しているのを見て、響きが可愛いからとカフェの店員さんや語学堂の年上クラスメイトに使っていました。ある日、韓国人の友人から『悪気がないのはわかるけれど、聞いていてヒヤヒヤするからチョドヨに直したほうがいい』と真顔で注意され、顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしました」。
この現象の背景には、日韓の「親密さ」に対する心理的解釈のズレが存在します。日本人は親しくなりたい相手に対して、あえてくだけた言葉を使うことで「心の壁を取り払う」アプローチを取る傾向があります。しかし、長幼の序や序列意識が言語構造に組み込まれている韓国社会では、「相手を尊重しているからこそ、適切な敬語(チョドヨ)で境界線を保つ」ことが最大の誠意と見なされます。
韓国の大手IT企業で日韓アライアンスを担当する30代の韓国人マネージャーは、ビジネス現場の実態をこう証言します。「オンライン商談の雑談で、日本の若い担当者様が『ナド!』と相槌を打たれたことがありました。意味は通じますが、社内会議で同席していた役員の眉がピクッと動いたのを覚えています。ビジネスの席では『저도 동감입니다(私も同感です)』や『저도 그렇게 생각합니다』を使うべきであり、無自覚なタメ口はプロフェッショナリズムを著しく損ないます」。