「サラダ油を使った塩味なら、普通に塩味と呼べばよかったのではないか」という疑問が湧くのも自然です。しかし、そこには当時の時代背景と消費者の心理が深く関わっています。
昭和30年代から40年代初頭にかけての日本は、食の欧米化が一気に進んだ転換期でした。当時、大豆や菜種から高度に精製された無味無臭の澄んだサラダ油は、ごま油や菜種油に比べてクセがなく、ドレッシングとして生野菜にかけて食べられる画期的な油として市場に浸透し始めていました。当時のサラダ油は決して大衆的な安価な油ではなく、家庭の食卓を華やかに彩るハイカラでモダンな高級品というブランドイメージを持っていたのです。
1960年代に米菓大手の亀田製菓が発売した「サラダホープ」や、1969年(昭和44年)に登場したロングセラー「ソフトサラダ」をはじめとする各社の商品は、「単なる塩味」とするよりも「サラダ油を使った洋風で新しいお菓子」としてアピールする戦略を取りました。「サラダ味」というネーミングは、昭和の消費者にとって洗練された憧れのライフスタイルを想起させる強力なキラーワードだったのです。