虹村形兆が「弓と矢」を用いて杜王町の無実の一般人を無差別に貫き、次々とスタンド使いを生み出していた背景には、極めて悲痛な家庭環境の崩壊がありました。この虹村兄弟の過去の経緯は、第4部全体のダークサイドを象徴する重要なプロットとなっています。
かつて虹村家は貧しいながらも平穏な家庭でした。しかし、母親が病死したことを契機に父親は荒れ狂い、幼い形兆と億泰に激しい家庭内暴力を振るうようになります。そんな父親が金欲しさに魂を売った相手こそが、第3部の元凶であるDIO(ディオ・ブランドー)でした。父親はDIOに忠誠を誓い大金を得る見返りとして、脳内に自立制御器官である「肉の芽」を植え付けられていたのです。
1989年、エジプトにて空条承太郎の手でDIOが完全に消滅した瞬間、肉の芽は暴走を開始しました。父親の脳と肉体を侵食・融合した細胞は、理性を奪い、醜い緑色の肉塊へと変貌させました。さらに残酷だったのは、その身体が「驚異的な再生能力」を獲得してしまった点です。自傷行為をしても即座に肉片が結合し、病気にもならず老衰もしない――形兆たちが見たものは、汚泥を啜りながら生き続ける、死ぬことすら許されない父親の哀れな姿でした。
形兆が掲げた「弓と矢の真の目的」は、父親を殺害できる強力なスタンド能力者を意図的に創り出すことでした。形兆は冷徹な悪党を演じながらも、本質は「父親をこの無限の苦痛から解放してやりたい」という一心に憑りつかれていたのです。