宮沢りえという女優の真骨頂は、役に自らの肉体を極限まで馴染ませる執念にあります。
大きな転機となった映画『紙の月』では、平凡な主婦が欲望の渦に飲み込まれていく危うさを、研ぎ澄まされたスレンダーなシルエットで見事に表現しました。微かな心の揺らぎや焦燥感が、絞り込まれた身体を通して観客の胸に痛いほど刺さります。
さらにその評価を決定づけたのが、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』です。末期がんに侵されながらも家族に深い愛を注ぎ続ける母親役を演じるにあたり、彼女は過酷な体型管理を自らに課しました。頬が削げ、骨格が浮き上がるほどの迫真の肉体変化は演出の領域を超え、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞する大きな原動力となったのです。濃密なヒューマンドラマを影で支える彼女の覚悟に、日本映画界全体が息を呑みました。