睡眠障害の背景には、単なる心理的プレッシャーだけでなく、器質的(身体的)な病理や神経伝達物質の不均衡が深く関わっています。「気合で治す」というアプローチが通用しないのはこのためです。
まず代表的な不眠症 原因として挙げられるのが、ストレスに起因する交感神経の過剰な興奮です。家庭環境の変化や過密な労働が続くと、身体をリラックスさせる副交感神経への切り替えが破綻し、自律神経失調症 睡眠障害の併発につながります。体温が下がらず、脳が過覚醒状態(ハイパーアラウザル)に陥るため、眠ろうと焦るほど脳波が覚醒パターンを示してしまいます。
中年以降の男性や閉経後の女性に急増するのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。睡眠中に上気道が狭窄・閉塞し、無呼吸と低呼吸を繰り返すことで血中酸素濃度が急低下します。脳は窒息を防ぐために一晩に数十回から数百回も「微小覚醒」を起こすため、本人は眠っているつもりでも脳は全く休めていません。高血圧、心筋梗塞、脳卒中の発症率を3〜4倍に引き上げる極めて危険な身体疾患です。
一方、若年層から発症し周囲から「怠慢」「サボり」と誤解されやすいのが過眠症 ナルコレプシーをはじめとする中枢性過眠症群です。オレキシンと呼ばれる覚醒維持神経伝達物質の欠乏などが原因で、突然の強烈な睡眠発作や、感情が高ぶった際に全身の脱力発作(カタプレキシー)を起こします。これは脳の覚醒スイッチが物理的に機能不全を起こしている状態であり、意志の強さとは一切関係がありません。
さらに、現代の24時間社会で増加の一途をたどるのが概日リズム睡眠障害です。体内時計を司る視交叉上核のリズムが地球の24時間周期と同調できず、睡眠相後退型(明け方にならないと眠れず昼過ぎまで起きられない)などに陥ります。特に夜間のスマートフォンやPC画面から放たれるブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制し、体内時計を2〜3時間後退させる決定打となります。