2人が全国的な人気を獲得した最大の契機は、1991年から放映された清掃サービス大手「ダスキン」のテレビCMでした。演出家の市川幸佑氏らが手がけたそのCMで発せられた「きんは100歳100歳、ぎんも100歳100歳、ダスキン呼ぶなら100番100番」というリズミカルな掛け声は、瞬く間に全国の流行語となりました。
このブームを決定づけたのが、記者会見でレポーターから投げかけられた「CM出演料(ギャラ)は何に使われますか?」という問いに対する答えです。2人は顔を見合わせ、即座にこう答えました。
「老後の貯金にします」
100歳にして「これから訪れる老後」を見据えて貯金するというユーモアに、会見場は爆笑に包まれ、日本中がそのバイタリティに圧倒されました。しかし、当時の関係者への取材記録や自著に記された手記を読み解くと、この言葉は単なるウケ狙いのジョークではなかったことが分かります。
小作農の家に生まれ、幼少期から糸引き工場で過酷な労働に従事し、嫁ぎ先でも貧困と闘い続けた2人にとって、「誰にも経済的な迷惑をかけずに自分の足で立つ」ことは骨の髄まで染み込んだ人生訓でした。公的年金制度が未発達だった時代を生き抜いたからこそ、100歳を超えてもなお他人に依存せず、自らの稼ぎを蓄えとして残そうとする強い「生活者の誇り」が宿っていたのです。なお、得られた出演料の多くは、社会福祉協議会への寄付や台湾への招待旅行などに使われ、社会へ還元されました。