文字として歌詞を眺めたときに広がる美的世界も、聴き手を引きつけて離さない要因だ。椎名林檎の歌詞には、日本語の情緒を極限まで研ぎ澄ませた美しい表現と、思春期の少女が漏らすような生々しい口語体が同居している。
「ぎゅっとしていてね」「ここへ来てね」といった平易で切実な言葉の周りを、緻密に計算された音韻と独特のメロディラインが取り囲む。分かりやすさばかりが優先されがちな現代のポップスにおいて、この言葉の重厚感と手触りの良さは、聴き手に強烈な「言葉の体験」をもたらす。画面越しに歌詞を検索する人々は、単に意味を知りたいのではなく、その言葉の質感を視覚的にも確かめたいのだ。