これほど愛されていた店舗が、なぜ閉店を選ばざるを得なかったのか。その理由は、単なる一店舗の売上問題ではなく、外食産業全体を揺るがした地殻変動と、とりあえず吾平の運営会社であるアスラポート(現JFLAホールディングス傘下)の戦略転換にあります。
関係資料および飲食業界の構造分析から判明した、決定的な要因は以下の3点です。
第一に、郊外ロードサイド型・総合居酒屋のビジネスモデル限界です。かつて平成中期に一世を風靡した「郊外の大型駐車場を備えた低価格総合居酒屋」は、飲酒運転の厳罰化、若年層のアルコール離れ、そして深夜帯の外出控えによって全国的に急速な市場縮小を経験しました。車社会の山梨県ではハンドルキーパーの確保が必須であり、アルコール売上への依存度が高い大型店舗ほど維持コストが重荷となっていったのです。
第二に、運営親会社によるブランドポートフォリオの再編です。アスラポートおよびグループ各社は、不採算店の整理や、人件費・光熱費の高騰に対応するためのスクラップ&ビルドを推し進めました。利益率の低い大型居酒屋業態から、テイクアウト需要に強い業態や専門特化型の小型飲食店へのシフトが加速し、その過程で地方の「とりあえず吾平」各店が統廃合の対象となりました。
第三に、山梨県内におけるドミナント崩壊が挙げられます。かつては県内複数箇所で展開されていた「とりあえず吾平 山梨店舗一覧」を見ても、石和エリアや甲府市近郊にあった系列店舗が次々と撤退していきました。資材配送やスーパーバイザーの巡回といったスケールメリットが失われたことも、撤退の引き金を引く一因となりました。