緒形拳さんが残した代表作は枚挙にいとまがありませんが、中でも映画史に燦然と輝く金字塔が、今村昌平監督とタッグを組んだ諸作品です。
1979年の映画『復讐するは我にあり』では、冷酷無比な実在の連続殺人犯・榎津巌を怪演。狂気と人間臭さが同居する凄まじい迫力は国内外で絶賛され、数々の主演男優賞を総なめにしました。さらに1983年の『楢山節考』では、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞。老いた母を背負って雪深い楢山へ捨てに行く息子・辰平の葛藤を体当たりで演じ、世界的な評価を確固たるものにしました。
テレビドラマにおける不朽の傑作といえば、1972年の『必殺仕掛人』における藤枝梅安役が外せません。昼は温厚な鍼医者、夜は冷徹な殺し屋という二面性を持つダークヒーローを完璧に体現し、後の「必殺シリーズ」の隆盛を築く決定打となりました。善悪の彼岸を超えた複雑な人間の業を描き出す力において、緒形さんの右に出る者はいませんでした。