1973年11月5日、東京・新宿。白昼の伊勢丹デパート前で、日本中を震撼させる歴史的事件が起きた。プライベートで買い物を楽しんでいたアントニオ猪木と倍賞美津子夫妻を、サーベルを手にしたインドの怪我が襲撃したのだ。着衣は破かれ、流血する猪木。警察が出動する大騒動となり、翌日のスポーツ紙一面を独占した。
「あれはヤラセではないのか」。当時の世論は真っ二つに割れた。しかし、現場に居合わせた目撃者の証言や当時の『ワールドプロレスリング』関係者の回想によれば、周囲のパニック状態は完全に制御不能だった。狂気と見せかけた冷徹な計算、あるいは計算を超えた純粋な暴走。リングの外まで戦場に変えるこの破天荒な手法によって、リングは一夜にして社会現象へと昇華したのだ。