SNSや動画サイトで「お尻ダンス」などと面白おかしく拡散されがちな猫の行動ですが、小動物臨床の現場において、猫がお尻歩きをする理由は笑い事ではありません。その大半は、肛門の左右下部にある一対の袋「肛門嚢(こうもんのう)」に分泌液が溜まりすぎ、掻くことのできない部位の猛烈な痒みや圧迫痛に苦しんでいるサインです。
「朝起きたら愛猫がお尻を絨毯に押し付けて狂ったように擦り歩いていた」という飼い主の手記やネット上の相談事例を検証すると、その数日後に急激な悪化を迎えているケースが目立ちます。肛門腺から出る分泌液は、縄張りを示すフェロモンを含む特有の強い刺激臭を持ちます。通常はうんちをする際の腹圧で便と一緒に自然排泄されますが、導管が細かったり分泌液の粘度が高かったりすると外へ出せなくなります。
不快感を解消しようと床に擦りつけることで肛門周囲の粘膜がうっ血し、症状を加速度的に悪化させる悪循環に陥るのです。お尻歩きを確認した段階で、すでに自然治癒の限界を超えていると警戒しなければなりません。