「ゼロ磁場」という言葉を聞くと、磁界そのものが全く存在しない真空のような空間をイメージしがちですが、地球物理学的な解釈は異なります。地球そのものが巨大な磁石であり、北極がS極、南極がN極の性質を帯びて地磁気を形成しています。通常、地表では約0.5ガウス(約50マイクロテスラ)前後の磁界が観測されます。
ゼロ磁場と呼ばれる場所では、正反対の磁力を持つ地層同士が正面から押し合い、互いのベクトルを打ち消し合っています。物理学でいう「力の釣り合い」によって、空間全体の磁気測定値が見かけ上ゼロに近づくわけです。磁気が消失したのではなく、巨大なエネルギー同士が衝突し合い、拮抗した状態で凝縮されている場と捉えるのが正確な理解です。
この環境下に方位磁石を持ち込むと、本来北を指すべきN極の針が特定の方向を失い、ゆっくりと回転したり、激しく震えたりする現象が発生します。現地での実測調査でも、わずか数十センチ立ち位置を変えるだけでコンパスの挙動が急変するケースが確認されており、局所的に複雑な磁気異常が生じていることは紛れもない事実です。