肉体美がぶつかり合う激しい土俵のシーンだけでなく、緻密に練られた人間ドラマが本作を世界的な傑作へと押し上げました。その中心を担ったのが、日本を代表する演技派キャスト陣です。
猿桜の才能を見抜き、型破りな指導で彼を育て上げる猿将親方を演じたのはピエール瀧氏です。角界の厳しい上下関係や伝統の重圧に押しつぶされそうになりながらも、弟子のために泥をかぶり、静かに闘志を燃やす親方の渋みと哀愁を見事に体現しました。妻役を演じた小雪氏との絶妙な夫婦の掛け合いも、物語の緊張感を和らげる重要なアクセントとなっています。
相撲への情熱を持ちながらも力士としての道を諦め、呼出(よびだし)として猿桜を一番近くで支える親友・清水を演じたのは染谷将太氏です。恵まれない体格に対する葛藤や、親友がスターダムへと駆け上がっていく姿を間近で見守る複雑な感情の揺れ動きを繊細に演じ、視聴者の共感を強く集めました。
さらに、大相撲の世界を外からの視点で鋭く追究する毎朝新聞の記者・国嶋飛鳥役を務めた忽那汐里氏の存在も際立っています。当初は伝統主義的な大相撲を「野蛮で時代遅れ」と冷笑していた彼女が、土俵の上で命を削る男たちの真剣勝負に触れ、次第にその熱量に飲み込まれていく過程を感情豊かに熱演。閉鎖的な角界と現代社会をつなぐ架け橋としての重要な役割を果たしました。