フライパンで西京焼きを焼くとあっという間に焦げ付いてしまう根本的な原因は、漬け床に使用される西京味噌(京都発祥の白味噌)の糖度にあります。一般的な米味噌や赤味噌と比較して、西京味噌は米麹の割合が非常に高く、ブドウ糖や麦芽糖といった糖分が重量の約30〜35%を占めています。
糖分と魚のタンパク質が熱によって反応する「メイラード反応」は、香ばしい風味を生み出す一方で、約150℃を超えると急速に炭化へと移行します。一般的な焼き魚の感覚で中火以上の強さで熱すると、魚の中心部に熱が伝わる前に表面の糖分だけが先に発火点近くまで達し、黒焦げになってしまう仕組みです。
焦げ付きを防ぎながら旨味だけを身に残すためには、下準備における西京焼きの味噌の落とし方が決定的に重要となります。プロの調理現場では、以下のステップが厳格に守られています。
もっとも推奨される方法は、キッチンペーパーを使って身の表面の味噌を指先で優しく撫でるように拭き取る手法です。味噌漬けの工程で魚の内部まで塩分とアミノ酸がしっかり浸透しているため、表面の味噌を取り除いても味が薄くなる心配はありません。どうしても味噌が固着している場合は、流水で一瞬だけ洗い流し、その直後に清潔なペーパーで余分な水分を1滴も残さず完全に吸い取ることが、生臭さを抑えて香ばしく焼き上げるための必須条件です。