一方で、SNSで頻繁に推奨されながらも専門家が眉をひそめる手法がある。重曹や歯磨き粉、金属用研磨剤(ピカール等)で物理的にゴシゴシ擦るやり方だ。
確かに、研磨剤を使えばどんなに頑固な汚れも落ち、一見するとピカピカになる。だが、拡大鏡でその表面を覗けば惨状は一目瞭然だ。微細な研磨粒子が青銅の柔らかな地金を削り、無数のヘアライン(引っかき傷)を刻み込んでいる。光を乱反射させることで白っぽく光って見えるだけで、硬貨本来の滑らかな鏡面仕上げは永久に失われてしまう。
将来的な希少価値やコレクションとしての美しさを保ちたいなら、物理的な摩擦はご法度だ。とくにギザ十(昭和26年から33年にかけて製造された縁にギザがある10円玉)のようなコレクターズアイテムを研磨剤で磨いてしまうと、貨幣価値以上のプレミアムが完全に消滅する。手入れはあくまで「化学の力」に任せ、擦らずに汚れを浮かすのが鉄則だ。