『紙兎ロペ』の歴史を語る上で避けて通れない最大の分岐点が、2013年5月に起きた原作者・内山勇士(うちやまゆうじ)氏の電撃的な降板劇です。本作はもともと、内山氏が監督・脚本・キャラクターデザイン・アニメーション制作を手掛け、主人公のウサギ「ロペ」やリスの「アキラ先輩」をはじめとするほぼすべての登場人物の声を、声質を変えながら内山氏が1人多役で演じ分けて制作されていました。あの独特な間合い、アドリブ感に満ちたボソボソとしたリアルな会話劇は、内山氏の卓越した作家性と声の演技によって生み出されたものです。
しかし、2012年5月に劇場版長編映画が公開され、同年秋からフジテレビ系『めざましテレビ』での毎日放送がスタートして急速にビジネス規模が拡大する過程で、制作サイドとの間に決定的な亀裂が生じました。内山氏は降板当時、自身のブログやSNS等で「自分の知らないところで企画やキャスティングが進んでいた」「作品の方向性や権利関係を巡り、精神的に追い詰められた」といった趣旨の手記やコメントを残しており、実質的に作品から排除される形となった苦悩を吐露しています。
この内山氏の離脱に伴い、現場では緊急の声優交代が断行されました。アキラ先輩やロペの声は、公式に大々的な代役声優の名が発表されることはなく、主に制作スタッフ陣やモノマネ技術を持つ非公開のキャスト陣へと引き継がれたと伝えられています。ファンからは「イントネーションが微妙に変わった」「初期のトゲや生々しいシュールさが薄れ、マイルドな朝の子供向けアニメになった」と激しい賛否両論が巻き起こり、現在に至るまで「声が変わった経緯」の真相として語り継がれています。