折原みとの名前を日本中に決定づけたのが、1990年に刊行された『時の輝き』です。講談社X文庫ティーンズハートのレーベルにおいて、それまでのライトな学園恋愛もののフォーマットを打ち破り、医療と死生観というシリアスなテーマを真正面から取り上げました。
本作のあらすじは、看護師を目指して病院実習に励む主人公・日野俊恵が、骨肉腫のために片足を切断し、過酷な闘病生活を送る高校生・神崎耕平と出会うところから始まります。当初は心を閉ざしていた耕平ですが、俊恵の一途でひたむきな看護に触れるうちに、次第に生きる希望と笑顔を取り戻していきます。やがて互いに惹かれ合う二人。しかし、病魔は容赦なく耕平の身体を蝕んでいきます。限られた時間のなかで、二人が紡ぎ出す純粋な愛と「今を生きることの尊さ」が胸に迫ります。
1995年には、高橋由美子(俊恵役)と山本耕史(耕平役)のダブル主演、朝間義隆監督によって松竹配給で映画化されました。アイドル的人気を博していた二人が見せた迫真の演技と、原作の持つ重厚なメッセージ性は映画界でも高く評価され、ティーンズ層だけでなく大人の観客をも劇場で号泣させました。
読者がこれほどまでに本作に引き込まれた理由は、単なるお涙頂戴の悲恋ものに終始せず、「残された時間をどう輝かせるか」という人間の尊厳と生のエネルギーを徹底して肯定している点にあります。医療現場の過酷さや病気の痛みをリアルに描写しつつも、最後には読者の胸に温かい光を残す筆致こそが、30年以上の歳月を経ても色褪せない名作たる所以です。