水分を完璧にコントロールした後に待つのが、味の根幹を決める「合わせ酢」の設計です。大手レシピサービス「クラシル」や「レタスクラブ」などで支持を集める人気レシピを分析すると、成功のベースには揺るぎない調合比率が存在することがわかります。
最もバランスが良く、万人に好まれるきゅうりとしらすの酢の物の黄金比は、「酢3:砂糖2:醤油1」の三杯酢です。大さじ換算であれば、穀物酢または米酢大さじ1.5、砂糖大さじ1、醤油小さじ1(大さじ1/2)が、きゅうり1本にしらす30gを合わせた際の標準的な分量となります。
ここで計算に入れなければならないのが、主役の一角である「しらす」が持つ塩分です。文部科学省の日本食品標準成分表によると、釜揚げしらすには100gあたり約4.0g、しらす干しには約6.6gの食塩相当量が含まれています。一般的な三杯酢の配合のまま醤油を入れすぎると、塩辛さが際立ってしまいます。そのため、醤油は風味づけ程度に控え、酢の酸味と砂糖の甘味で全体を包み込む構成が求められます。
さらに、名店が実践するきゅうりとしらすの酢の物のプロの隠し味として知られているのが、「昆布だしの素をひとつまみ加える」、あるいは「煮切りみりんを小さじ1/2足す」という手法です。だしのうま味(グルタミン酸)が酢のツンとしたカドを包み込み、丸みのある料亭風の深いコクへと引き上げてくれます。また、生姜の搾り汁を数滴垂らすだけで、しらす特有の魚由来の生臭さを完全にマスキングし、爽快な後味を演出できます。