この前代未聞のキャンペーンが産声を上げたのは2005年7月のことです。旗振り役となったのは、日本全国の生乳生産者を束ねる中央酪農会議(現・Jミルク等の酪農乳業団体と連携)。当時の酪農界は、長引く生乳余りと消費低迷という構造的課題に頭を抱えていました。とりわけ深刻だったのが「中高生の牛乳離れ」です。小中学校の給食で毎日飲んでいた牛乳が、高校進学や卒業を機に炭酸飲料や清涼飲料水へと置き換わり、飲用量が劇的に激減する現象が長年放置されていました。
それまでの牛乳の広告といえば、「カルシウムで骨を強く」「毎日の健康習慣に一杯」といった直球の健康訴求が定番でした。しかし、反抗期や自己意識の芽生えを迎えた中高生にとって、親や教師から説教くさく勧められる健康論ほど響かないものはありません。当時の博報堂を中心とするクリエイティブチームは、従来の常識を根底から覆す大胆な仮説を立てました。「機能価値を伝えるのを一切やめよう。牛乳をティーンエイジャーの不条理な日常に寄り添う相棒に仕立て直すのだ」と。
こうして導き出されたのが、「牛乳に相談だ。」という意表を突いたキャッチコピーでした。恋の悩み、部活の焦り、容姿のコンプレックスといった思春期特有の悶々とした感情に対して、大真面目に「牛乳を飲めば解決する」と提示する。しかもその解決方法が、およそ科学とはかけ離れた超常現象やナンセンスなギャグであるという構図です。この突き抜けた発想の転換こそが、テレビCMの枠組みを超えてティーンのハートを鷲掴みにした最大の起爆剤となりました。