特別な外傷や基礎疾患がないにもかかわらず発症するものを「特発性自然気胸」と呼びます。この自然気胸の原因の中核にあるのが、肺の表面に形成される「ブラ」や「ブレブ」と呼ばれる薄い風船状の肺嚢胞(はいのうほう)です。何らかの負荷や誘因によって肺嚢胞(ブラ)が破裂し、そこから吸気が胸腔内へと漏れ出ることで発症に至ります。
医学界において長年注目されているのが、「肺に穴が開く病気はなぜ痩せ型に多いのか」という体型との相関関係です。統計上、特発性自然気胸の好発年齢は10代後半から20代、そして「長身・痩せ型・偏平胸」の若い男性に圧倒的に偏っています。呼吸器解剖学の知見では、成長期に身長が急激に伸びる際、胸郭の縦方向への成長スピードに肺組織の成長や血管の新生が追いつかず、肺の最上部(肺尖部)が過度にいびつな力で引っ張られます。その結果、肺尖部の血流が相対的に不足して肺胞壁が脆弱化し、ブラが形成されやすくなると考えられています。
一方、40代以降の中高年に多発するのは「続発性自然気胸」です。その主因は長年の喫煙習慣による慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺気腫、間質性肺炎などです。タバコの煙に含まれる有害物質によって肺胞の破壊が進み、肺全体がもろくなってできた気腫性変化が破れるため、若い世代の気胸に比べて基礎的な肺機能が低く、命に直結する重篤な呼吸不全を引き起こしやすい特徴を持っています。