作中の土方歳三を描くうえで欠かせないのが、史実のディテールとフィクションの大胆な融合です。その象徴とも言えるエピソードが、土方の愛刀「和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)」の奪還劇です。
史実において土方が佩刀していた十一代会津兼定は、土方の死後に日野の生家へと送られ、現在は土方歳三資料館に保管されています。しかし作中では、明治政府の役人によって没収され、小樽の銀行の金庫に保管されていたという設定で登場します。土方は自ら銀行強盗を働き、長年離れ離れになっていた相棒である和泉守兼定を力づくで奪還。「やっぱりコレじゃなきゃ駄目だな」と刀の重みを確かめるシーンは、武士としての魂を取り戻した瞬間として描かれました。
さらに物語を熱くさせたのが、新選組最強の剣客と称された元新選組二番組組長・永倉新八との再会です。樺戸集治監の剣術師範を務めていた永倉と土方が数十年ぶりに視線を交わし、老境に達した二人が再び同じ旗印のもとで肩を並べる展開は、歴史ファン・幕末ファンをも狂喜させました。互いの実力を誰よりも認め合う二人の熟練したバディ関係は、血気盛んな若者たちには出せない深い情緒を物語にもたらしました。