神経内科の専門病棟や訪問看護の現場、そして家族会に寄せられる手記からは、急速に衰退していく家族を前に立ち尽くす介護者の深い葛藤が浮かび上がります。
「先月まで普通に車の運転をして冗談を言い合っていた親が、今週は私の名前すら呼べず、ベッドで痙攣のようにビクついている。時間の感覚が崩壊していくようだった」――ある介護手記に記された告白は、家族が直面する過酷な現実をありのままに物語っています。
臨床の現場で特に問題となるのが、診断告知を受けた家族が抱える「孤立感と偏見への恐れ」です。病名に「ヤコブ病」と付くだけで、周囲から「うつる病気ではないのか」と距離を置かれたり、近隣の介護保険施設から受け入れを拒絶されたりする事態が依然として報告されています。患者が意思表示できる時間は極めて短いため、胃ろうなどの人工栄養補給を行うか、あるいは終末期の苦痛緩和を最優先にするかといった倫理的判断を、家族は短期間で突きつけられることになります。
現場を支えるソーシャルワーカーらは、「診断確定と同時に、即座にレスパイトケアや緩和医療チーム、難病相談支援センターと連携し、介護者の心理的バウンダリー(境界線)を守ることが崩壊を防ぐ唯一の道である」と強調しています。