実写ドラマの強烈なインパクトゆえに混同されがちですが、甲斐谷忍の原作漫画とテレビドラマ版では、秋山深一のキャラクター造形に明確な差別化が図られています。
原作の秋山深一は、登場初期は短髪で無精髭を生やした場面もあり、より泥臭く人間味を感じさせる「無骨なリアリスト」として描かれていました。天才的な頭脳を持ちながらも、マルチ組織を壊滅させた代償として心に深い傷を負い、社会の底辺で身を潜めていた暗い過去が、その荒削りな風貌に反映されていたのです。
一方、実写ドラマ版では演出プランとして「ファッショナブルで洗練されたアンチヒーロー」への大胆なシフトが行われました。中田ヤスタカ(CAPSULE)が手掛けたエレクトロな劇伴音楽、原色を効かせたスタイリッシュな美術セットに合わせ、松田翔太演じる秋山は、ロングコートを羽織り、感情を極限まで押し殺した都会的なクールガイとして再構築されました。
このビジュアルの再定義について、原作の甲斐谷忍自身もドラマ版の完成度と松田翔太の好演を高く評価しています。原作の泥臭い知性派と、ドラマ版の洗練された長身スタイリッシュ、双方が異なる魅力を放ちながら互いの評価を高め合う稀有なメディアミックスとなりました。
秋山深一に実在のモデル人物は存在するのか?
ファンの間で長年囁かれている「秋山深一には実在の天才詐欺師や心理学者のモデルがいるのか」という疑問について、公式取材や対談資料によると、特定の個人をそのまま模したモデルは存在しません。
ただし、作者の甲斐谷忍が構想段階で参考にしたのは、心理学や行動経済学の古典的論文、そしてマジシャンやメンタリストが駆使する「コールドリーディング」「ミスディレクション」の手法です。観察眼によって人間の微細な表情や嘘を見破るというプロファイリング能力を極限まで研ぎ澄ませた結果、あの唯一無二の秋山深一像が結実しました。