鋭敏な感受性で執筆されたハーパー・リーのピューリッツァー賞受賞小説『殺してはならない(To Kill a Mockingbird)』。これをスクリーンへ移植する大役を担ったのがユニバーサル・ピクチャーズだった。活字から映像への転換において、制作陣は巧みな再構成を試みている。
最大の違いは視点のフォーカスにある。ハーパー・リーによる原作小説は、主人公の少女スカウトの回想と内面描写に大きな比重が置かれ、南部社会の細やかな風俗や子供たちの小さな冒険が濃密に綴られる。一方、ユニバーサル・ピクチャーズが手掛けた映画版では、テンポ感を重視し、裁判を巡る緊張感と父親アティカスの存在感を前面に押し出した。小説が持つ叙情的な広がりを削ぎ落とすリスクを冒しながらも、映画ならではの凝縮されたドラマ性を生み出すことに成功したのである。