宿の誇る温泉は、まさに自然との一体感を極めた造りだ。山肌にせり出すように設えられた露天風呂へ身を沈めると、遠くに白銀の滝の瀑音がおぼろげに響く。春の新緑、夏の深い青葉、秋の錦繍、そして冬の圧倒的な雪景色。季節の移ろいがそのまま湯船の借景となる贅沢は、谷底の密集した旅館街では決して味わえない醍醐味だ。
泉質は無色透明ながら、肌にしっとりと吸い付くようなまろやかさを持つ含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉。湯上り後も身体の芯から温もりが逃げない。厳しい冬の寒風を受けながら、熱めの湯に浸かる瞬間の心地よさは格別だ。手足を思い切り伸ばし、山の稜線を眺めながら過ごす時間は、現代人が忘れかけていた深い充足感をもたらしてくれる。