「なりたけ錦糸町店」の暖簾をくぐると、まず耳に飛び込んでくるのは平ザルでリズミカルに背脂を叩き落とす「チャッチャッ」という小気味よい金属音です。ラーメンファンの間では「背脂チャッチャ系 錦糸町」の象徴として知られていますが、これほどまでに熱狂的なリピーターを生み出し続ける理由は何なのでしょうか。
取材と現場観察から見えてきた最大の要因は、豚の背脂が持つ融点とスープ温度の絶妙なコントロールにあります。同店で使用される背脂は、臭みが極めて少なく上質なコクを持つ国産豚のA脂にこだわっています。この脂が熱々の特製スープと合流した瞬間、液体と固体の中間のようなフルフルとした質感で丼全体に溶け広がり、舌の上で甘美な余韻を残しながらスッと溶けていきます。
さらに、錦糸町という街の地域特性も見逃せません。JR総武線と東京メトロ半蔵門線が交差し、歓楽街やビジネス街、下町の住宅街が混在する錦糸町駅南口エリアにおいて、疲弊した身体と脳が本能的に求める「塩分・糖質・脂質」の黄金トリオを、最も純度の高い形で提供しているのがこの店です。夜勤明けのワーカーや酒宴を終えたサラリーマンたちが吸い寄せられるようにカウンターへ座り、熱々のスープを喉へ流し込む姿は、まさに都市型オアシスとも呼べる光景を形成しています。