ネット上の質問コミュニティやSNSを観察すると、「血液検査で39項目のアレルゲンを調べたが全部ゼロだった。医者には『原因不明』と言われたが、毎晩のようにミミズ腫れが出て眠れない」という切実な投稿が溢れています。この現象の裏には、急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹の決定的な病態の違いが存在します。
発症から6週間以内に完全に治まるものを「急性蕁麻疹」、夕方から夜間にかけて毎日のように発疹が出没し、6週間以上持続するものを「慢性蕁麻疹」と定義します。多くの患者が「原因となった食べ物を突き止めて排除すれば治るはずだ」と考えがちですが、日本皮膚科学会の臨床疫学データにおいて、慢性蕁麻疹の患者で特定の食物が原因であるケースは全体の1%未満に過ぎません。
自著や専門外来で精力的に発信を続ける皮膚科医たちの証言でも、「食事アレルギーを疑うあまり、米と水以外口にできなくなり、栄養失調一歩手前で来院する患者が後を絶たない」という深刻な現場の実態が指摘されています。慢性蕁麻疹の本質は、食べ物に対する過敏反応ではなく、自身の肥満細胞が過敏になり、わずかな疲労、睡眠不足、ストレス、温度変化、下着の締め付けなどの物理的刺激だけで勝手にヒスタミンを放出してしまっている状態にあります。
原因食べ物を特定するための唯一科学的な自己管理法は、過度な絶食ではなく「詳細な食事・症状日記(フードダイアリー)」をつけることです。何を食べたかだけでなく、「何時頃にどんな作業をし、睡眠時間は何時間で、何分後に発疹が出たか」を2週間記録します。もし特定の食品を摂取した際に「毎回、2時間以内に、例外なく」症状が出るのであれば、その記録を持参して皮膚科専門医を受診することで、精度の高い確定診断が可能になります。