いじめられっ子だった心優しい少年、幕之内一歩。彼がボクシンググローブをはめた動機は、富や名声ではなく「強いって、どういうことだろう?」という極めて純粋で根源的な問いだった。
「立ち上がれば……また闘える」
どれほど強打を浴びて視界が揺れても、一歩は愚直に前へ出る。デンプシー・ロールの破壊力以上に読者を引きつけるのは、恐怖に震えながらも一歩を踏み出すその精神性だ。彼にとっての強さとは、相手をねじ伏せる力ではなく、自分自身の弱さから逃げない覚悟そのものを指す。連載が長期にわたり展開する中で、現役を退きセコンドとしてリングを見つめる立場になってもなお、この問いは色褪せるどころか深みを増している。