食事をしていない状態にもかかわらず、持続的に塩味を感じてしまう状態は、医学的には「自発性異常味覚」の一種として扱われます。その根底にある最も直接的なメカニズムは、唾液の質と量の急激な変化です。
健康な人の唾液は99%以上が水分で構成されており、ナトリウムやカリウムといった電解質はごく微量しか含まれていません。そのため通常は自分の唾液の味を意識することはありません。しかし、何らかの理由で唾液の分泌量が落ち込むと、水分だけが蒸発・減少し、残された塩分濃度が相対的に跳ね上がります。結果として、舌の表面にある「味蕾(みらい)」が濃縮されたナトリウムを感知し、常に塩水を口に含んでいるかのような感覚に陥るのです。
加えて、味覚のシグナルを脳へと伝える末梢神経の伝達エラーが重なると、実際の塩分濃度以上に味覚障害による塩辛い感覚が増幅されて認識されることになります。