標高1,574メートルを誇る高千穂峰の険しい山頂。荒々しい岩肌と吹きつける突風の中に、二股に分かれた異形の矛が刺さっている。古くから天の逆鉾として崇められてきたこの物体は、日本神話における最高神の命を受けた瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天孫降臨の際、動揺する地上世界を鎮定するために大地へ深く突き立てたものだと語り継がれてきた。
もっとも、現存する実物の歴史的ルーツには謎が多い。柄の部分に鬼の面が浮き彫りにされている特徴から、奈良時代から平安時代にかけての山岳修験者たちが祈祷のために奉納したとする見解が根強い。幾度もの火山噴火や激しい風雪に晒されながらも絶え間なく山頂に存在し続ける姿は、まさに神話と現実が交錯する接点そのものだ。