春はあけぼのの本当の意味とは?桜を拒み夜明けを選んだ清少納言の真意

春はあけぼのの本当の意味とは?桜を拒み夜明けを選んだ清少納言の真意

春はあけぼのの本当の意味とは?桜を拒み夜明けを選んだ清少納言の真意とは一体何なのか? 主要なファクトを丁寧に紐解いて紹介します。

平安中期の宮廷文化において、和歌の題詠で「春」といえば、それはほぼ同義で「桜(花)」を意味していました。『古今和歌集』や貴族たちの私家集を開けば、春の歌の約8割は桜の開花を待ちわび、あるいは散りゆく花を惜しむものです。この絶対的な文化的コードが存在していた時代に、清少納言はなぜ「花」を完全スルーして「時間帯」を提示したのでしょうか。

その背景と理由には、彼女の類まれな批評家精神と、「型通りの美意識に対するアンチテーゼ」がありました。

当時の一流サロンの女性たちに求められていたのは、先人の和歌を踏まえた教養でした。しかし、誰もが「春といえば桜爛漫の昼下がり」を褒めそやす状況に対し、清少納言は「誰もが言っている当たり前の美をなぞっても面白くない」という痛烈なカウンターを放ったのです。満開の花というわかりやすい物体ではなく、春特有の冷気が残る薄明かりの空気感や、刻一刻と変化する空の色彩という「感覚的なリアリティ」に目を向けさせる。ここに、従来の貴族社会を覆っていた抒情的な「あはれ(しみじみとした哀愁)」から、知性で面白がり切り取る「をかし(知的好奇心を刺激する面白さ)」への劇的なパラダイムシフトがありました。

山田 真由
著者

山田 真由

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