「メガネを光らせて不穏な空気や知略の高さを表す」という文法は、名探偵コナンが起源ではない。日本のアニメーションおよび劇画の歴史において、半世紀以上にわたり磨かれてきた表現技法だ。
元ネタの源流をたどると、昭和期の手塚治虫作品に登場するマッドサイエンティストや冷徹な官僚、あるいは梶原一騎原作のスポ根・劇画作品における謀略家に行き着く。当時は印刷技術や作画枚数の制約がある中で、キャラクターの「底知れぬ悪意や企み」を最小限の手間で表現するために、眼鏡の照り返しで目を隠す手法が多用された。
平成に入ると、この表現はガイナックス作品『新世紀エヴァンゲリオン』の碇ゲンドウによって世界中に広く認知される。デスクの前で両手を組み、白く光るメガネの奥から冷酷な指示を飛ばす司令官のビジュアルは、当時のアニメファンに強烈なインパクトを残した。
名探偵コナンは、この「怪しさ」「不気味さ」「知略」の記号であった白光メガネを、「正義の探偵が犯人の嘘を暴くカタルシス」のシンボルへと鮮やかに反転させた。怪しさを漂わせながらも、光の先にあるのは揺るぎない真実の探求という構図が、この演出を唯一無二の代名詞へと押し上げた要因だ。