急激に体温が上昇した際、多くの人は「ウイルスや細菌に感染したのではないか」と疑います。しかし、医療機関の診断や専門医の解説資料によると、人間が高体温に陥るプロセスには大きく分けて「感染症による発熱(Pyrexia)」と、放熱障害による「うつ熱(Hyperthermia)」の2系統が存在します。
私たちが日常会話で使う「こもり熱」とは、医学的にはこの「うつ熱」に該当します。うつ熱との違いを問われる場面も多いですが、実態としてはほぼ同義であり、臨床や介護の現場で一般の方へ分かりやすく説明するために噛み砕いた通称が「こもり熱」です。
通常、人間の体温は脳の視床下部にある体温調節中枢によって、約36.5℃〜37.2℃前後の狭い範囲に厳密にコントロールされています。風邪やインフルエンザなどの感染症にかかると、免疫系がウイルスを攻撃するために視床下部の「設定温度(セットポイント)」を強制的に38℃や39℃へと引き上げます。これが医学上の「発熱」です。
一方のこもり熱は、脳の設定温度は36℃台の平熱のまま維持されているにもかかわらず、「外気温が高すぎる」「衣服を着せすぎている」「汗をうまくかけない」といった物理的要因によって産熱と放熱のバランスが崩れ、熱が体内に閉じ込められてしまった物理的なオーバーヒート状態を指します。
実際に、日本パラリンピックスポーツ協会等の調査データやファミケアの医療特集でも言及されているように、脳性まひや脊髄損傷、急性脳症の後遺症などで体温調節自律神経に障害を抱える人々の間では深刻な課題となっています。車椅子テニスの国内競技者を対象とした実態調査では、選手の約1割が発汗障害による熱のこもりやすさを自覚しており、体外への熱放散能力の低下がいかに直接的な高体温を招くかが浮き彫りとなっています。