オリンピックの騒動を終えた国母は、コンテストシーンでの輝かしいキャリアに甘んじることはなかった。世界最高峰の舞台であるX GamesやUSオープンを制覇し、ハーフパイプの頂点に君臨しながらも、彼の視線は人工的な雪の壁のその先へと向けられていた。整備されたパイプを飛び出すこと。それは、自然の造形美と対峙するバックカントリースノーボードへの本格的な転身を意味していた。
アラスカの険しい脊梁、雪崩のリスクと隣り合わせの切り立った崖(クリフ)。死と隣り合わせのエクストリームな環境こそが、彼が己の存在証明を刻むべきキャンバスだった。コンペティションの点数稼ぎではない、自らの美意識だけを頼りにラインを描く生き様。それはアスリートから真の「アーティスト」へと進化を遂げる決断だった。