本作の原点である小説版は、作家の野坂昭如が1967年に発表し、第58回直木三十五賞を受賞した名作だ。新潮社から刊行されている原作文庫を開くと、高畑勲監督が手掛けたスタジオジブリ制作のアニメーション映画とは異なる、泥臭く生々しい執念が立ち現れる。
映画版は美しく抒情的な映像美でアニメーション映画界に金字塔を打ち立てたが、野坂昭如の原作はより自己批判的で、贖罪の念に満ちている。実妹を戦乱のなか餓死させてしまった野坂自身の痛切な体験が投影されており、文章の端々から主人公・清太に対する冷徹な視線と自責の念が滲み出ているのだ。メディアによる表現の違いを分析することは、感想文に圧倒的な深みをもたらす。