海洋生物が陸上動物を圧倒して最長の寿命を誇る背景には、生息環境の物理的特性が深く関係しています。2006年にアイスランド沖で採取された二枚貝「アイスランドガイ」の個体(愛称:Ming)は、貝殻の年輪測定によって507歳であることが判明しました。中国の明朝が成立した1499年頃に誕生したこの貝は、シェフィールド大学などの研究チームによって、細胞膜を構成する過酸化脂質の劣化耐性が通常の生物と桁違いに高いことが確認されています。
一方、脊椎動物の最長寿記録を保持するのが、グリーンランドシャークとも呼ばれるニシオンデンザメです。コペンハーゲン大学を中心とした国際研究チームが眼の水晶体を用いた放射性炭素年代測定を実施したところ、体長約5メートルの大型個体で392歳(±120年)という驚異的な年齢が算出されました。
ニシオンデンザメは性成熟に達するまでに約150年もかかり、時速1km程度という超スローペースで泳ぎます。極寒の深海という過酷な環境下で、心拍数や細胞分裂の速度を極限まで下げることにより、活性酸素によるDNA損傷を最小限に食い止めているのです。