2022年5月15日の夜、横浜中華街大通りに構える聘珍樓本店のシャッターが下ろされた際、店頭には「移転に向けた一時閉店」を告げる案内文が掲示されていました。長年の常連客や近隣の店主たちは「別の場所で新たなスタートを切るのだろう」と受け止めていましたが、そのわずか18日後、状況は暗転します。
2022年6月2日、横浜本店を運営していた株式会社パシフィック聘珍樓が、東京地裁より破産手続き開始決定を受けたことが信用調査機関の速報で明らかになりました。負債総額は約3億5000万円前後(債権者約150名)。一見すると、中華街の顔とも言えるトップブランドの負債額としては小規模に映る数字でした。
なぜ「移転」とアナウンスしながら破産に至ったのか。帝国データバンク等の取材データや商業関係者の話を総合すると、経営陣は実際に店舗規模を大幅に縮小した「ニューノーマル対応型」のコンパクトな新店舗への移転を模索し、複数の候補地と水面下で交渉を進めていたとされます。しかし、長引く資金繰りの悪化に金融機関からの新規融資は難航。移転費用の捻出すら立ち行かなくなり、事業継続を断念せざるを得ない限界点に達していたのが実情でした。「移転」という言葉は、再建を信じて最後まで奔走していた現場の悲痛な願望であり、結果として最悪の結末を糊塗する形になってしまったのです。