スタジオジブリといえば『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』のようなファンタジックで温かみのある作風で知られていた。しかし『もののけ姫』で宮崎駿監督が選んだのは、室町時代の日本を舞台にした時代劇アニメであり、同時に狂気と血煙が交錯するダークファンタジーの領域であった。
首を撥ねられる兵士、腐敗するタタリ神、生命の生と死を司るシシ神の異様さ。モロの君の言葉が持つ凄絶さは、こうした過酷な世界観の上に成立している。血生臭い戦闘シーンと、息をのむほど美しく描かれた原生林の対比。時代劇アニメの枠組みを借りながら、普遍的な生命の倫理を問う姿勢こそが、本作を単なる娯楽作から芸術的作品へと引き上げた要因である。