姿勢を変えた瞬間や、深く息を吸い込んだタイミングに限定してズキッと痛む場合、内臓そのものというよりも胸郭を取り巻く神経や呼吸器組織の物理的トラブルが考えられます。代表格が肋間神経痛の症状です。背骨から肋骨に沿って前胸部へと走る末梢神経が、疲労やストレス、冷え、あるいは不良姿勢による胸椎の歪みによって圧迫・刺激されることで生じます。
肋間神経痛の特徴は、痛みの鋭さです。「電気が走るようなピリピリ・チクチクした痛み」「咳やくしゃみ、深呼吸をした瞬間にだけ鋭利な針で刺されたような激痛」が、肋骨のラインに沿って片側だけに出現します。帯状疱疹の初期段階でも発疹が出る数日前から肋骨周辺に同様の神経痛が現れるため、皮膚の違和感やピリつきがないかの観察も欠かせません。
さらに見過ごせないのが、息を吸うと肩甲骨が痛い理由として挙げられる胸膜の炎症(胸膜炎)や自然気胸です。肺自体には痛みを感じる知覚神経がありませんが、肺を覆う胸膜の壁側には神経が密集しています。息を吸い込んで肺が大きく膨らんだ瞬間に胸膜同士が擦れ合ったり、気胸によって胸腔内に漏れ出た空気が神経を刺激したりすると、呼吸運動と完全に同期した背中や肩甲骨周辺の強い痛みが引き起こされます。