現在、ヴィンテージバイク市場における陸王の取引相場は高止まりを続けています。2026年時点のオークションデータや専門店での流通価格を調査すると、書類なし・欠品多数の不動ベース車であっても300万〜450万円前後、実動かつオリジナル度の高い「陸王 RQ 750」であれば600万〜850万円、当時の純正サイドカー付き極上車に至っては1,000万円を超えるプライスタグが付けられるケースも珍しくありません。
しかし、ヴィンテージ旧車のレストア現場からは、甘いノスタルジーとはかけ離れた過酷な現実が伝わってきます。関東地方の旧車専門ファクトリーで陸王のレストアを手がける熟練メカニックは、その難しさを次のように明かします。
「陸王は米国のハーレーから導入された図面をベースにしていますが、昭和30年代の日本国内で生産されたため、ボルト一本に至るまで当時の規格で作られています。米国製ハーレーのインチ規格パーツがそのままポン付けできる箇所もあれば、陸王独自にミリ規格や独自寸法へ改変された部品も混在している。純正のキャブレターや点火時期のディストリビューターが破損した場合、オークションで中古部品を探すか、図面を起こして旋盤でワンオフ削り出しを行うしか選択肢がありません」
また、現代のガソリン環境や熱対策も大きな課題です。サイドバルブエンジン特有の熱のこもりやすさは、現代の真夏の猛暑では深刻なオーバーヒートを引き起こします。エンジンオイルの油温管理、手動進角装置の適切なレバー操作、定期的なバルブクリアランス調整など、「走らせるたびにバイクと対話する技術」を持たないドライバーには到底維持できない代物といえます。