ネット上で人魚写真に関する議論が巻き起こる際、多くの人が見落としている決定的な盲点が存在します。それは、「大手メディアや公的機関が人魚の存在を報じた」とされるニュース番組風動画の正体です。
2010年代以降、ネット上で「人魚実在の決定的証拠」として拡散され続けている動画の代表格に、アメリカのケーブルテレビ局アニマルプラネットが制作した特別番組『Mermaids: The Body Found(邦題:人魚の謎/海底に眠る声)』があります。
この番組は、科学者たちが未知の水生類人猿の遺体を発見し、米海軍がそれを隠蔽したという筋書きで、本物の研究者へのインタビューや軍の機密映像に見える映像が次々と登場します。世界中で大センセーションを巻き起こし、アメリカ海洋大気庁(NOAA)に「人魚が存在する証拠はない」という異例の公式声明を発表させる事態にまで発展しました。
しかし、この番組は完全な「モキュメンタリー(偽ドキュメンタリー)」でした。登場した科学者はすべてオーディションで選ばれた俳優であり、証拠映像とされたものは高度なVFXでした。制作側は冒頭とエンディングでフィクションである旨を表示していましたが、ネット上には刺激的なシーンだけが切り抜かれて転載され、「国家が隠蔽した本物の記録映像」として一人歩きを続けているのです。