本作を語る上で欠かせないのが、映画界でも高い評価を得ていた脚本家・渡辺あやの手腕だ。彼女が紡ぎ出したのは、朝ドラ特有の「無条件に善良で健気なヒロイン」では断じてない。欲深く、怒りっぽく、口も悪い。しかし、誰よりも働くことと生きることに貪欲な小原糸子という規格外の女性だった。
理不尽な男社会や戦争の荒波に呑まれることなく、ミシンを武器に戦い抜く糸子の姿は、単なる美談ではない。失敗し、激しく後悔し、それでも前を向く生々しい息遣いがある。従来のステレオタイプを粉砕した渡辺あやの筆致は、名作ヒューマンドラマとして本作を不動の地位へと押し上げた最大の原動力である。