健康な体を守りたいと願う通常の人間心理とは正反対に、自ら毒物を口にしたり傷口を感染させたりする患者たち。その歪んだ行動の奥底には、幼少期に体験した深刻なトラウマやネグレクト、あるいは強烈な見捨てられ不安が潜んでいる。自分が過酷な病魔と戦う姿を見せることでしか、他者からの温かい手差しや承認を実感できないのだ。
苦痛に満ちた自傷行為を通じ、患者は自分の存在価値を確かめようとする。一時的な安心感を得るために繰り返される狂言は、やがて本人の身体を深刻に蝕み、命の危険さえ招く。医療従事者を欺くための観察眼や偽装工作は驚くほど精緻であり、臨床の場で正体を見破るには長い月日を要することも少なくない。