ウェブ上のコミュニティやライフヒストリーの聞き取り調査を行うと、記号化された言説とは異なる、切実でリアルな体験談が数多く浮かび上がってきます。現場の当事者たちが直面しているのは、周囲からの勝手な期待と自分自身の内面とのズレです。
都内のマッチングアプリ利用者を対象としたヒアリング取材では、外見や社会的な肩書から「絶対タチでしょ」と決めつけられることに苦しんできた男性の手記のような告白が印象的でした。
「会社では管理職でリーダーシップを取っているからか、アプリで会う相手からは100%タチとして扱われます。でも、プライベートな時間やベッドの中では、すべてを忘れて相手に委ね、甘えたいのが本音です。告白してネコであることを明かすと、『イメージと違ってガッカリした』と連絡が途絶えたことが何度もありました」(30代前半・IT企業勤務)
SNSや当事者コミュニティで頻繁に共感を呼ぶタチネコあるあるを検証すると、以下のような生々しい実態が日常茶飯事として語られています。
- タチあるある:外では常に頼れるリーダーを演じているため、プライベートで無条件に甘えさせてくれるパートナーに出会うと一気に涙脆くなる。
- ネコあるある:一見おとなしそうに見えて、実は「相手が自分の思い通りにリードしてくれるか」を冷静に品定めしている策士タイプが少なくない。
- リバあるある:「どっちでもいいよ」と言いつつ、相手が極端なタチだとネコに回り、極端なネコだとタチに回らざるを得ず、結局自分の本当の好みが分からなくなる。
- 共通あるある:関係が深まってから「実はリバじゃなくて完全ネコだった」「本当はタチをやりたかった」とカミングアウトされ、ベッドライフの危機に陥る。
こうした声が物語るのは、ラベルを貼ることで安心感を得る一方で、そのラベルが自分や相手を縛る「足かせ」にもなり得るというパラドックスです。