マイクロカプセル技術の歴史を語る上で欠かせないのが、20世紀半ばに起きたオフィス空間の大革命である。1950年代、米国のNCRコーポレーションにおいて研究を率いたバーレット・K・グリーンらのチームは、手を取汚さずに複写ができる「カーボンレス紙」の開発に挑んでいた。
彼らが取り組んだ感圧複写紙開発プロジェクトこそが、世界で初めてマイクロカプセルの実用化に成功した歴史的転換点である。紙の裏面に微小なインクカプセルを塗布し、筆圧で破裂させることで発色させる仕組みは、当時のビジネス界に衝撃を与えた。この成果は単なる事務用品の発明にとどまらず、分子レベルで物質を制御する現代のマテリアルサイエンスの扉を大きく開く結果となった。