菜葉菜の女優人生を語る上で欠かせないのが、鬼才・瀬々敬久監督との出逢いだ。人間の業や孤独、そして救いなき世界における微かな希望を重厚なヒューマンドラマとして描き出す瀬々組において、彼女はまさにミューズとも言えるポジションを築き上げた。
とりわけ、上映時間4時間38分という異例のスケールで制作され、第61回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した金字塔『ヘブンズ ストーリー』での演技は劇的だった。復讐と救済の狭間で揺れ動くヒロインの感情を全身全霊で体現し、観客の脳裏に深く刻み込んだ。悲哀に満ちた瞳の奥に宿る揺るぎない覚悟。瀬々監督とのタッグによって、彼女は単なる「演者」を超えた一人の映画的表現者としての地位を確立したのだった。