現在、東京国立博物館に所蔵されている等伯の作品群は、国内外から訪れる鑑賞者を圧倒し続けている。海外の美術評論家からも「モネの光の探求を数百年先取りしていた」と激賞されるなど、日本美術の枠を超えた普遍的な評価を獲得している。
等伯の凄みは、描かれていない空間――「余白」にすべてを語らせる点にある。湿気を含んだ風の匂い、遠くでかすかに響く木立のざわめき。五感すべてを刺激する空間構築力は、現代のデジタル技術をもってしても再現困難な領域に達している。
展示室のガラス越しに向き合うとき、私たちはただ絵を見ているのではない。何百年もの時間を超えて、筆を執る等伯の息遣いと、張り詰めた精神の波紋をそのまま体感しているのだ。