港町が紡いできた歴史の奥深さに触れるなら、神奈川区台町にたたずむ「割烹旅館 田中家」の存在を避けては通れない。創業は文久3年(1863年)。幕末の風雲児として知られる坂本龍馬の妻・おりょう(楢崎龍)が、龍馬の亡き後に仲居として勤務していたことで全国にその名を知られる老舗中の老舗だ。
暖簾をくぐれば、幕末から明治の激動期へタイムスリップしたかのような静謐な空間が広がる。代々大切に受け継がれてきた伝統の味と、日本庭園の風情。単に「泊まる」「食べる」という行為を超えて、歴史のドラマを肌で体験できる宿の存在は、どのような最新ホテルにも代替できない特別な価値を放っている。