衣服に付着した塗料の除去難易度は、水分の有無によって劇的に変化します。塗料がついた直後の「まだ湿っている状態」であれば、繊維の網目に樹脂が完全に架橋・硬化していないため、流水と一般的な中性洗剤の界面活性作用だけで70〜80%以上の色素を洗い流すことが可能です。特に水性塗料の場合、エマルション状態が維持されているうちは、大量のぬるま湯(30〜35℃程度)で揉み出せば、大半の汚れは比較的速やかに押し流せます。
一方で、読者を最も悩ませるのが時間が経って乾いたペンキの落とし方です。塗料は乾燥の過程で水分や溶剤が揮発し、樹脂成分が化学的に重合して強固な高分子塗膜を形成します。これは塗料本来の「一度塗ったら風雨に耐え、剥がれないようにする」という目的が衣類の繊維上で完全に発現してしまった状態を意味します。
完全に硬化したペンキに対して、通常の洗濯機洗浄を施しても全く歯が立ちません。水分子が強固な樹脂の結合に入り込めないためです。固まった塗膜を打破するには、「樹脂を膨潤(ふやかす)させる有機溶剤の選定」と「繊維の隙間から剥離させて別の布へ吸着させる叩き出し」という、化学と物理の連動アプローチが必須になります。